症例紹介 猫の横隔膜ヘルニア
- 2023/07/09
- 06:52

2-3日元気がなく食べないとのことで来院した4歳の雄猫です。室外にも出る猫ちゃんとのことで、浅速呼吸状態も認めたことから、直ちにレントゲン検査を行うと、胸腔内に消化管と思われる臓器を認め(黄色の囲み)、肺の陰影がわずかで(水色の矢印)上方に押しつけられていることから、横隔膜ヘルニアと診断し、外科的に整復した症例です。術前の血液検査では、CPK(筋肉の損傷を表す数値)が著高の1,000超えと肝酵素の上昇を認めていました。

開腹後、胸腔に入っていた腸管・肝臓をもとに戻し、胸壁から切れてしまっている横隔膜の筋肉部(水色矢印は胸腔側)を確認しているところです。腹側側1/2ほど切れており広範囲であったことから、欠損部を腹膜でフラップしながら整復を行い、閉腹しました。

手術中の呼吸管理も問題なく、術後合併症の再拡張性肺水腫なども認ず、3日後にはICU管理から一般の猫舎に移りました。

最終抜糸も終わり治療終了となりました。 横隔膜ヘルニアは外傷性のものがほとんどで、交通事故や高いところから落下するなどで強い衝撃を受けることで発生します。横隔膜が損傷することで、胸腔内に腹腔の臓器が入り込むため、特徴的な腹式呼吸がみられます。手術中の死亡の可能性も非常に高く、手術をして普通の生活が送れるようになるまでの成功率は6割と言われています。
外へ出る猫ちゃんは交通事故などにあるリスクが高いです。みなさん室内飼育をお願いします。
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